今年3月4日、大阪市で第73号となる管理計画認定を取得した港区の「ファミリープラザ朝潮橋」(築41年、2棟277戸)。現在排水管更新等の改修工事を行っている。今年10月末に終了する予定だ。
総工事費2億625万円のうち最大で1億5000万円を住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」で賄う。返済期間は10年。
おととし初めて役員に就任、管理組合理事長として2年目の富川薫さん(67)は認定取得について「金利の優遇を受けるという実利に重点を置きました。とにかく金利の安いお金を借りることが最大の目的」と話す。
修繕積立金の不足は長期修繕計画に問題があった。
富川さんによれば「ファミリー―」の長計は建設当初に作られたA4一枚。修繕項目・周期などの記載のみで、修繕積立金の積み立て額との整合や収支については全く計画されていなかった。
排水管改修工事は項目すらなく修繕積立金が不足している認識はなかった。
こうした長計になっていた理由やこれまで積み立てていた修繕積立金の単価の根拠は「分かりません」。建設当初の長計のままだった点については「特段、誰も不都合を感じていなかったからと思われます」(富川さん)。
長計の案は委託管理会社が5年程度ごとに提示していたようだが、毎年の予算案作成に際し手持ちの資料として参考にしていた程度だったそうだ。
だが築40年近くたち排水たて管の経年劣化で漏水事故が5~7件ほど発生。改修工事の見積もりは2億円以上と修繕積立金では足りないことが判明し問題が表面化した。
修繕積立金の収支計画を含めた長期修繕計画の案を管理会社に依頼し、昨年9月の臨時総会で決議した。この長計が実質的に「初めて、まともな長期修繕計画」(同)となった。積立金の根拠も明確になった。
この総会で修繕積立金は1平方メートル当たり200円、自走式立体駐車場使用料を1万9000円にアップ。市への認定申請も決めた。
昨年12月の定期総会では借り入れの上限を1億5000万円にすることなどを決議。
副理事長の近江利政さん(75)は「借り入れは最初で最後。それが大前提にありました」と振り返る。
理事会では段階的な値上げや戸当たり100万円ほどの一時金徴収も検討したが、次回の大規模修繕工事に向け「借り入れをせずにできるという基盤を確保できるような徴収をすべき」(富川さん)と結束し一気に上げることに決めた。
値上げに際しては事前説明会を2回開催。国がガイドラインで示す平均値の半分以下であることなどを説明し「強い意志で言い最終的にご理解いただいた」と富川さん。
現在役員4年目になる副理事長の白水慶太さん(50)は、修繕費用は「物価を考えたら今後もっと上がっているリスクはある。そうなるとより大きな差になってしまうので今言えるのは修繕計画を基にちゃんとできるところまで持っていく。そこを意識して説明しました」と話している。
排水管改修工事は専有部分を含む汚水管、共用部分の雑排水管・通気管・電気温水器用排水管の交換。汚水の鋳鉄管、雑排水の銅管、通気・電気温水器の炭素鋼鋼管を硬質ポリ塩化ビニール管に取り換える。
今後の課題はこの排水管改修に加え、委託管理内容の見直し、敷地内のプール。それぞれ施設委員会、管理委員会、プール委員会を設置した。プールは基本的に理事会メンバーで運営しており、今後の利用を含め住民アンケートを実施し検討する。 左から副理事長でプール委員会委員長の白水慶太さん、理事長で管理委員会委員長の富川薫さん、副理事長で施設委員会委員長の近江利政さん。写真に写る敷地内プールの運営をどうしていくかが今後の課題だという
