貸付型のファンド事業「Funds」を運営するファンズ(本社東京、藤田雄一郎社長)が昨年12月に始めた管理組合向けの金融商品が注目を浴びている。前回の「クレアスファンド みらいの樹」同様、元本保証はないが今年10月現在、年率1・5~2・0%(税引き前)程度の固定利回りでの運用が可能だ。
商品名は「Funds for『マンション修繕積立金』応援パック」。
管理組合からの運用希望に応じて専用のファンドを組成する、オーダーメード型の商品だ。
ファンドは1億円規模を想定しており、最低運用金額は「原則1億円」(同社)。小・中規模マンションにはハードルが高いが、運用を希望する管理組合が複数存在し、運用金額が合算して1億円程度になる場合は1組合当たりの運用金額が1億円未満でも専用のファンドを組成。運用が可能だとしている。
管理組合の資金は、同社の審査を通過し、一定の基準を満たした国内の上場企業にファンドを通じて同社のグループ企業が貸し付ける。管理組合は一定期間後に元本と分配金を受け取れる仕組みだ(図に運用のイメージ)。
管理組合の特性を踏まえ、通常の「Funds」と異なり貸付先を国内の上場企業に限定。貸し付けは運用金額・需要に応じて複数社に行うこともできるなど、より安全性を高めているのが特徴だ。
運用期間は1~3年。中途解約はできないが、予期せぬ修繕費が必要になるリスクに備え運用期間を短くし期間も選べる商品設計を行った。
分配金は、あらかじめ決まった利回りが変動しない「固定利回り型」だ。
同社によれば「Funds」全体の運用実績は2019年1月以降今年7月4日時点の累計募集金額が約962億円。分配遅配・元本欠損が起きたファンドは1件もない。
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神奈川県のマンション(築11年、約120戸)管理組合は今年6月、修繕積立金の運用規定を整備し総会で可決した。昨年12月に専門委員会を設置し、運用に関する規定の整備に着手。具体的な運用先や運用ルール、役員の免責事項などを定めた。
この規定に基づき検討した結果、ファンズの「応援パック」を運用先に決定。この10月から運用を始めた。
管理組合理事の松井徹哉さんによれば、運用金額は1億円。運用期間は1年に設定し計3回、つまり3年間運用する。長期修繕計画で3年後に予定する大規模修繕工事を見据えた対応だ。
元本保証のない金融サービスの利用を決めた背景には修繕積立金不足がある。昨年、入居後初めて長計を見直した結果、計画通りに大規模修繕を実施すると、その時点で積立金が「限りなくゼロに近くなる」(松井さん)事態に。
災害等による緊急対応リスクを考慮すると「積立金ゼロ」という状況は避けたい。このリスク回避策として着目したのが修繕積立金の運用だった。3年間の運用で数百万円の確保を見込んでいる。
運用に関してはアンケートを取るなどして意向を確認した後、説明会を開き事情を伝えていたせいか、総会で「否定的な質問はほぼなかった」(松井さん)という。