管理業者管理者方式 留意事項を提示 口座名義にも言及 国交省 規則改正で通知 「管理組合名含むもの」に 利益相反取引「密接な関係者」 設計・監理、継続的受注者も

 ②契約締結時の重説会・重要事項、利益相反取引関係の概要

 ■重要事項説明会

 ・受託契約とは別に「管理者受託契約」の説明会が別途必要で、当該契約の締結について決議する総会とは別日に行うことが望ましいとした。受託契約の説明会と同日の別の時間帯に開催することは差し支えない

 ・契約更新で従前と同一の条件の場合は重説会は不要だが区分所有者全員への書面交付は必要

 ・改正法施行前に管理者受託契約を締結している場合、改正法施行後に同一条件で更新する際は重説会が必要

 ■利益相反の恐れがある取引に係る事前説明

 ・改正法施行規則で規定した人的関係、資本関係その他の関係で管理業者と密接な関係を有する者以外にも、管理業者と長期間にわたり設計・監理業務等を継続的に受注している事業者がいる場合、可能な限りその事実を情報提供することが望ましい

 ・事前説明会は当該取引を承認する総会とは別日に実施することが望ましい

 ・当該取引の相手方以外の者から見積もりを取得し相見積もりを実施するとともに、その内容について説明が必要。相見積もりをしなかった場合も理由の説明が必要 他では一般社団法人マンション管理業協会が要望していた「従業員証明書への旧姓使用」を許可。10月2日以降、希望者には証明書への旧姓併記が適当だとし、旧姓が併記された証明書交付後は書面の記名等で旧姓を使用してよい、とした。

  管理組合等の誤認を避けるため、現姓と旧姓の恣(し)意(い)的な使い分けは「厳に慎むべきこと」だとした。

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  管理業者管理者方式における財産の分別管理、重要事項説明会、利益相反取引等における主な留意事項を左表に示した。

  分別管理についてはまず、保管用口座の印鑑等の所持に関する例外規定について、管理業者による印鑑等の長期的な保管を「推奨するものではない」と言及。区分所有者、また監事らの第三者から印鑑保管者の有無を「定期的に確認することが望ましい」とした。

  例外規定のイについては管理業者やその関連会社以外に印鑑保管者がいない状況を区分所有者に示すことが必要だと指摘。要件を満たす例として、合理的な範囲で区分所有者らに印鑑保管を募ったが承諾者が現れなかったことを記録するといった方法を挙げた。

  同省不動産業課は「合理的な範囲」や募集方法は「管理業者の判断に任せる」スタンスだ。「全員でも、理事長経験者らある程度の人数でもいいし管理組合が納得できる範囲」と説明する。

  監事や印鑑保管のみを担当する法人ら第三者に保管させる場合、適切な保管体制が取られているか確認することが望ましいとした。

  保管者は「基本的には総会決議で選任されなければいけない」(同課)。

  保管者の有無も定期的に確認することが望ましい。同課によれば管理者受託契約更新時に確認する趣旨。

  管理業者が印鑑等を保管する際の総会決議は「一度取ったから継続的というわけではない。契約締結に合わせて決議をしていただく」(同)。

  保証契約では、締結期間内に保管口座の金額が変動することが予想される場合は、当該期間内における最大額以上に係る契約である必要があるとした。

  「最大額」とは期末までに収納が予定される修繕積立金・管理費等を加えた額を指す。積立金等の値上げが予定されるケースでは「最大額以上の保証契約に見直していただく必要がある」(同)。

  口座の名義人は「管理組合名を含むものとする」と例示。「〇〇マンション 管理組合管理者 管理業者名+担当取締役+役職+個人名」といった名義は、管理組合名が含まれており問題はない。

  利益相反行為では規則で「人的関係、資本関係その他の関係においてマンション管理業者と密接な関係を有する者」を具体的に示したが、これ以外にも、管理業者と長期間にわたり設計・監理業務等を継続的に受注している事業者がいる場合、区分所有者等に可能な限りその事実を情報提供することが望ましいと言及した。

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  改正規則案には32の個人・団体から51件の意見があった。

  意見に対する同省の見解では、保管口座の印鑑等の保管を認める要件を満たす旨の書面は必要事項を示していれば重説書で問題ないことを提示。

  利益相反の恐れがある取引の相手方以外の者に見積もりを行わなかった理由で「区分所有者に見積もり業者を公募したがいなかった場合も理由としてよいか」との質問に「理由になると考えられる」と答えている。

  同日、管理者事務委託契約の重要事項説明書の様式も公表。「管理組合以外の者との間で授受される金銭等で管理者事務に関連する役務の提供を伴わないものに関する事項」には金銭等の金額などの詳細、授受の相手方、理由を「全て明記する」としている。

 ①財産の分別管理関係の通知概要

 ・トラブル、事故防止の観点から、管理業者以外の区分所有者や監事等の第三者で印鑑等を保管する者の有無を定期的に確認することが望ましい、当該第三者に印鑑等を保管させた場合でも、適切な保管体制が取られているかなどについて確認することが望ましいとした(規則87条第4項2号関係)

・管理業者による印鑑保管について、当該管理業者の関連会社等以外に印鑑等の保管を承諾する者がいない状況を区分所有者等に対して示すことが必要だとした。「合理的な範囲で区分所有者、第三者等に対して印鑑等の保管を承諾する者を募ったが、区分所有者等の負担可能な条件で印鑑等の保管を承諾する者が現れなかったことを記録することなど」と具体例を挙げた(同・イ関係)

・適切な保管体制として、以下のような措置を例示(同・ロ関係)

①管理者事務を担当している部署とは別の部署が印鑑等を保管

②保管に際しては、金庫等施錠ができるものを用いるとともに、解錠・施錠権限は保管部署の管理職に限定する

③管理者事務の担当者が印鑑等を使用する際は、管理者事務担当部署の管理職から印鑑等使用者、使用理由、使用日時、押印文書等の確認を受けるとともに、これらを記録する

④解錠・施錠に際しては、印鑑等を使用することについて管理者事務担当部署の管理職が確認したことを確認の上、解錠・施錠権限を有する印鑑等の保管部署の管理職を含めた複数人が立ち会うとともに、印鑑等使用者、使用理由、使用日時、押印文書、解錠・施錠日時等を記録する

・オンラインバンクを活用している場合、以下のような措置を例示

①ID、パスワードを入力してログインするだけでは支払い等を行うことはできず、別途承認が支払い等のためには必要となるサービスを利用する

②支払い等の承認者は管理者事務担当部署とは別の部署の管理職とする

③管理者事務担当者が支払い等を行う際は、管理者事務担当部署の管理職から支払い等の担当者、理由、日時、請求書等の確認を受けるとともに、これらを記録する

④支払い等の承認を受けるに当たっては、当該支払い等について管理者事務担当部署の管理職が確認したことを確認の上、支払い等の担当者、理由、日時、請求書等を、支払い等を承認する者に対して説明し、これらを記録する

・「保証契約」とは、管理業者が第三者との間で締結する契約だと言及。保証契約の締結期間内に保管口座、収納・保管口座の金額が変動することが予想される場合は、当該期間内における最大額以上に係る保証契約である必要があるとした(同・ハ関係)

・保管口座、収納・保管口座の名義人について定めた「管理組合に帰属することが一見して明らかな者」について「管理組合名を含むもの」と例示(同・ニ関係)

 ・管理業者が印鑑等を保管する場合、規則に定める要件を満たしていることを区分所有者等に書面で説明した上で、当該管理業者による印鑑等保管の是非について総会決議で区分所有者等が最終的に判断すべきだと言及。将来のトラブル・事故防止の観点から、保管の在り方については、総会等で議論するなど定期的に確認・見直しを行うことが望ましいとした。当該総会決議は管理者受託契約の締結を決議する総会で行うことは差し支えないが議案は分けること、これらに係る説明を併せて実施することは差し支えないが、説明会の名称を分けることがそれぞれ望ましいとした(同・ホ関係)

 国土交通省は10月2日、同日付で改正・公布されたマンション管理適正化法施行規則についての留意事項などを示し、不動産業課課長名で関係業界団体の長宛てに通知した。管理業者管理者方式について、契約締結に際し実施する事前説明会は契約を決める総会とは別の日に行うことが望ましい、管理業者による保管用預金口座の印鑑等保管は総会で区分所有者が判断すべき、など規則の運用について示した。保管用口座の名義人にも言及。規則が規定する「管理組合に帰属することが一見して明らかな者」について「管理組合名を含むもの」と例示した。

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