元本保証武器に躍進 修繕積立金信託 販売対象限定も オリックス銀行 運用期間5年中途解約OK 最新の予定配当率、0・68% ③   いまどき  金融商品

 「修繕積立金信託」は同銀と提携する管理会社の受託管理組合が利用できる。問い合わせは同銀修繕積立金デスク フリーダイヤル 0120(094)711へ

  オリックス銀行(本社東京、寺元寛治社長)が2021年に取り扱いを始めた「修繕積立金信託」が今年に入り販売実績を上げている。金利上昇局面を迎え、元本保証商品にもかかわらず一般的な定期預金金利を上回る配当率が設定されるようになった点が影響しているようだ。同銀と提携する管理会社の業務受託管理組合に販売対象を絞る「限定商品」だが、修繕積立金不足に危機感を抱く管理組合の心をつかんでいる。

  同商品は、各組合から集めた修繕積立金を同銀が預かり管理・運用する管理組合専用の金銭信託商品。運用期間は5年間。500万円から100万円単位で申し込みができ、複数契約も可能だ。

  信託元本に欠損が生じた場合は同銀が穴埋めする「元本補てん付き」の元本保証商品だ。預金保険制度の対象でもあり、万一同銀が払い戻しを停止した場合も保険金の範囲内で資金は保護される。

  預け入れから1年ごとに決算を行い、都度予定配当率に基づき収益金を支払う。元本の償還は5年後の信託終了時に行う(上図に商品の仕組み)。予定配当率は同銀が市場金利の動向を見て年に1回、決算日に決定する。

  募集は年4回。12月まで申し込みを受け付ける現在募集分の予定配当率は税引き前で年0・68%。今年4月に公開した前々回募集分の予定配当率は同0・45%だったが、7月に0・68%に引き上げ。3カ月で0・23%も上昇した。

  取り扱い開始後、昨年5月募集分までの予定配当率は同0・10~20%で推移していたが、昨年8月募集分同0・30%、今年8月募集分同0・45%と、金利上昇局面を迎え配当率も右肩上がりの傾向を示している。

  急な修繕需要にも対応できるよう中途解約を認めている、また残高証明書を年1回、無料で発行する点も特徴の一つ。中途解約時の手数料は不要だ。

  申し込みは郵送で行い、預金口座開設や銀行への来店は不要。申込金は同銀名義の口座に振り込む。

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  「修繕積立金信託」は同銀と提携する管理会社の受託管理組合が利用できる。

  同銀によれば、もともと大京アステージ(本社同、真島吉丸社長)と共同で商品開発を行っており、当初提携管理会社は同社だけだった。その後年に1、2社のペースで提携先を増やしてきたが、提携先の拡大方針を打ち出し、今年だけで5社提携先を増やした。今年10月末時点の提携管理会社は11社に上る。

  提携先を増やした影響もあり、利用実績も拡大している。具体数は非公表だが、同銀によれば今年度募集分の申し込み組合数は24年度比で、すでに3・5倍に達している。

  提携先は財政の健全性やコンプライアンスに加え、受託管理する管理組合数などを考慮し決定する。

  受託組合数の目安は「おおむね1000前後」(同行)。提携先を厳選している印象だが提携条件の拡充・緩和などについて「検討できるところは検討していきたい」(同銀)と話している。

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  明和地所コミュニティ(本社同、近藤洋介社長)は2年前に同銀との提携をスタートさせ受託組合に「修繕積立金信託」の紹介をしている。役員が交代する際など、都度商品の紹介を行ってきた。

  同社管理本部の平松雅紀本部長によれば、今年10月時点での利用実績は80組合。特に今年利用数が増え、80組合中67組合は今年から利用を始めている。

  大規模修繕等工事費の高騰で資金不足への不安が高まる中、管理組合から「何か助けになるような金融商品はない?」と尋ねられることが増え、配当率が上昇している同商品に注目が集まった形だ。

  「(現在募集中の予定配当率)『0・68%』は、これまでと(管理組合の)反応が違う」(平松本部長)。予定配当率の上昇の影響は大きいようだ。

  元本保証商品のため利用の可否が問題になることはないという。資金運用に際し元本保証を前提にすると「これ(修繕積立金信託)しかない」という結論になり、「議論の対象になるのは(信託する)金額だけ」と平松本部長。

  平松本部長は、同商品の利用で、管理会社にも「メリットがある」と力を込める。

  定期預金から乗り換えるケースでは、毎月行っていた通帳への記帳が不要になるなど「事務部門の効率化が図れる」のだそうだ。

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