参考条文
■専有部分の保存行為の実施請求
○区分所有者は、その専有部分または共用部分を保存し、または改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分もしくは自己の所有に属しない共用部分を使用し、または自らこれらを保存することを請求することができる(後略)
区分所有法第6条2項
○前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分もしくは専用使用部分への立ち入りまたは自らこれに保存行為を実施することを請求することができる
標準管理規約第23条1項
○本条で想定される他の者が管理する専有部分または専用使用部分への立ち入りまたは保存行為の実施とは、ある区分所有者の専有部分内の配管から漏水が発生し、共用部分に被害が生じているような場合において、漏水発生元の専有部分に立ち入るとともに、漏水発生元の専有部分の区分所有者に代わって漏水箇所の補修を行う場合等が想定される
標準管理規約23条関係コメント
※傍線は改正部分 国土交通省は10月26日、東京・虎ノ門のビジョンセンター東京虎ノ門でマンション管理適正化シンポジウムを開いた。一連の改正法、10月17日に公表された改正マンション標準管理規約について同省職員が解説。管理規約の見直しをテーマにしたパネルディスカッションも行った。この日の模様は後日同省ホームページで動画配信する予定だ。
パネルディスカッションでは▽総会における多数決要件の見直し▽総会招集時の通知事項等の見直し▽専有部分の保存行為の実施請求▽共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等▽国内管理人―について、実情を交え留意点などを提示。管理規約を変更する際の注意点なども示した。
「専有部分の保存行為の実施請求」(区分所有法6条2項)は、従来の立ち入り権を含む「使用」に加え区分所有者自ら保存請求ができることを明確化する改正を行った(表に条文)。標準管理規約も法改正の趣旨を踏まえ、条文を一部変更した(23条1項)。
標準規約が想定しているのは「専有部分内の配管から漏水が発生し、共用部分に被害が生じているような場合で漏水発生元の専有部分に立ち入るとともに漏水発生元の区分所有者に代わって漏水箇所の補修を行う場合」(23条関係コメント=新設)だと言及している。
藤木賢和・全管連理事は「特に高経年マンションでは給・排水管の漏水にまつわるトラブルが多くある」と指摘。
「今回の改正で保存行為が実施できるということが明らかになったため、区分所有者双方によって対応への認識が明確になったものと思っている」と述べた。
佐藤元弁護士は「法律は主語が『区分所有者は~』となっており『区分所有者が保存行為しますよ』と、こういう条文になる。で、管理組合が(保存行為請求を)やる場合どうするかっていうのが次の話で、それが今回の標準管理規約では23条の規定がこちらに当たる」と解説。
同条は主語が「区分所有者」ではなく「前2条により管理を行う者」(管理組合)と規定されており「漏水によって共用部分に影響が生じるときに、管理組合において単に立ち入る請求だけではなくて『保存行為の請求もできますよ』という付け加えを今回した」(佐藤弁護士)。
佐藤弁護士は、通常の漏水ではスラブを通らずに下階に水が来ることはあり得ないとし「共用部分への影響が出るということで管理組合が主体となって漏水発生元に立ち入り・保存請求ができる手当てをしたということ」だと述べた。
「共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等」(同法17条3項、18条4項等)。すでに標準管理規約では21条2項に規定を設けている、いわゆる「配管・配線等の一体的改修」が可能である旨明文化した。
管理規約に「特別の定め」を設け、工事に際し総会で承認を得れば実施できる決まりだ。
日管連の髙辻潤司副会長は、自身が関わったマンションにおける専有部分を含めた給・排水管更新工事の「一体的改修」について報告。給・排水管等が全体的に老朽化している場合にはコストが抑えられる、また工期短縮、日常生活への影響の軽減といった観点から「非常に有効であると感じた」と述べた。
法改正で「一体的改修ができるという根拠が明確になった」とし「今までの問題が有効に解決できるのではないか」と期待を口にした。
「一体的改修」は1997年2月の標準規約改正時条文を新設。2021年6月の改正でコメントを追記している(次ページ表参照)。
同規定について佐藤弁護士は「実務では本当に全面更新できるのか、費用を管理組合が専有部分を含めて負担してよいのか、先行工事している専有部分の区分所有者に対してはどうしたらよいのか、とさまざまな法解釈上の問題があった」と指摘した上で、法改正における効果を解説。
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パネルディスカッションの様子。司会は齊藤広子・横浜市立大学教授。パネリストは同大客員准教授の佐藤元弁護士、久保依子・一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員、髙辻潤司・同日本マンション管理士会連合会副会長、藤木賢和・NPO法人全国マンション管理組合連合会理事。シンポジウムにはオンラインを含め770人の申し込みがあった
