欠陥住宅全国ネット 4 3参院議員会館 国会審議にらみ再度集会 共用部分に係る請求権の行使 改めて問題点指摘 「あるべき法改正」を提示 「規約対応」提案する意見

  • 2面
  • 2025年4月15日

 ②改正法案の該当箇所

 管理者

 (権限)

 26条 1

 略 2

 管理者は、その職務(第18条第6項(第21条において準用する場合を含む)の規定による損害保険契約に基づく保険金ならびに共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金(以下この条および第47条において「保険金等」という)の請求および受領を含む。第4項において同じ)に関し、区分所有者(保険金等の請求および受領にあっては、保険金等の請求権を有する者(区分所有者または区分所有者であった者(書面または電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ)による別段の意思表示をした区分所有者であった者を除く)に限る。以下この条および第47条において同じ)。同項において同じ。)を代理する。 3・4

 略 5

 管理者は、次の各号に掲げるときは、遅滞なく、それぞれ当該各号に定める者にその旨を通知しなければならない。この場合における区分所有者に対する通知については、第35条第2項から第4項までの規定を準用する。

 一

 前項の規約によりその職務に関し原告または被告となったとき

 区分所有者

 二

 前項の規約により保険金等の請求および受領に関し原告または被告となったとき

 保険金等の請求権を有する者

 三

 前項の集会の決議により保険金等の請求および受領に関し原告または被告となったとき

 保険金等の請求権を有する者(区分所有者を除く)①欠陥住宅ネットらが示す「あるべき法改正」 共用部分の持ち分の処分

 15条

 共有者の持ち分(共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求権を含む)は、その有する専有部分の処分に従う

 2

 ※

 略 共用部分の負担および利益収取

 19条

 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する

 2

 共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金については各共有者は、その持ち分に応じて個別にこれを請求および受領することはできない

 3

 共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金については各共有者は、法第55条第1項第1号または第2号を原因とする解散による清算前には、その分割を求めることができない 附則 第15条ならびに第19条第2項および第3項の規定は、改正法施行時に既に存する区分所有建物についても適用する ※傍線部分を現行法に追加

 欠陥住宅被害全国連絡協議会(欠陥住宅全国ネット、木津田秀雄代表幹事)は4月3日、東京・永田町の参議院議員会館1階講堂で「マンション共用部分の100%補修の実現を求める院内集会」を開いた。院内集会の開催は昨年12月に続き2回目。区分所有法改正案に示された「共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」について弁護士が改めて問題点を指摘する一方、学識経験者が見解を述べた。

 集会には、一連の改正法案を審議する衆院国土交通委員会の理事・委員も立憲民主・国民民主党から4人程度、他にも与野党から衆・参院議員が数人参加した。

 前回に続き、神崎哲弁護士が改正法案の問題点を報告した(別項に「問題の所在」)。

 法制審議会区分所有法制部会で委員を務めた鎌野邦樹・早稲田大学名誉教授が見解を述べたほか、管理者が共用部分に係る損害賠償請求権を一括して行使したが、債権譲渡を受けていない元区分所有者がいるとして訴えを却下された管理組合の代理人が、実情を報告するなどした。

 神崎弁護士は「あるべき法改正」に言及した(表①参照。表②は管理者による損害賠償請求権の行使を規定する改正法案)。

 まず、建物に瑕(か)疵(し)があった場合、原始区分所有者に帰属することになる損害賠償請求権を、専有部分の処分に伴い、新区分所有者に移転させるようにする(現行法15条に加筆)。

 その上で損害賠償金について、管理者による一括請求を前提に、区分所有者が個別に請求・受領をできない旨の規定を追加。また既存マンションにも改正法が適用されるよう、遡(そ)及(きゅう)効を認める規定を新設する。

 改正法案に照らした場合、26条2項「管理者の代理権」は維持し「別段の意思表示をした区分所有者であった者を除く」を削除する形になりそうだ。

 日本弁護士連合会(日弁連)がおととし8月、区分所有法制に対する中間試案に際し提出した意見書に沿った内容だ。

 神崎弁護士は「実は特別な法改正などしなくても『当然承継説』は現在の区分所有法の解釈としても十分に成り立つと考えられます」と持論を展開。

 「あるべき法改正」を示したのは「誤った解釈がされないように念のために法改正をしておくと、より望ましい」との考えからだと述べた。

 鎌野教授は、欠陥住宅全国ネットが採用を求める「当然承継説」に対しコメントした。

 法制審での審議では「当然承継説」への共感もあった一方、「承継説」を認めると区分所有法19条(表①参照)との整合性が取れなくなる点から「どこまで(承継説を)貫けるのかな、という疑問がありました」と振り返り、今後の手立てとして、「マンション標準管理規約での対応」を挙げた。

 「当然承継説」を採用するのは難しい、とする立場だ。

 鎌野教授は「最後まで迷ったが、出て行った方(元区分所有者)の権利というのも、一方では考慮しないといけないのかなと」とし「元区分所有者が主張する前に(規約を)制定するようなことで対処するほかないのかな」。法制審での審議でもそう発言した、と述べた。

 鎌野教授は昨年6月、同様のテーマで日弁連が主催したシンポジウムでも管理規約による対応を提案している。 次ページにつづく

 問題の所在…共用部分等の欠陥等で生じた損害賠償請求権は、欠陥発生時の区分所有者に帰属する。以前は訴訟に際し各区分所有者が個別に、または当該区分所有者全員で提訴する必要があったため2002年、管理者に代理権を与え損害賠償金を一括請求できるよう法改正が行われた。

 ただ損害賠償請求権を持つ区分所有者が債権譲渡をせず住戸を売却した場合でも管理者が「区分所有者」を代理して損害賠償請求できるか、などといった論点は深堀りされず、課題として残存した。

 法改正から14年たった16年7月、欠陥発生時の区分所有者2人の債権譲渡が行われていないことを理由に管理者(管理組合)の請求自体を却下する裁判例が現れ問題が顕在化した。

 今回の法改正では、売却などで区分所有関係から離脱した元の区分所有者の権利も代理して管理者が損害賠償を請求できる仕組みを整えたが、元の区分所有者が「別段の意思表示」をした場合、管理者は当該請求権を代理することはできない旨も併せて規定された。請求権は欠陥発生時の区分所有者に帰属するからだ。

 このため日弁連・欠陥住宅全国ネットらは区分所有権が譲渡された場合、当該請求権も新区分所有者に移転する「当然承継説」の採用を強く求めている。 昨年12月に続き開催された院内集会。改正法案の問題点を改めて指摘した コメントする鎌野教授

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