4 19日本マンション学会横浜大会メインシンポ 社会的資産としてのマンション 論理・施策を検討 基調報告弁護士・国交省参事官・横浜市担当者が登壇 「取り壊し」費

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  • 2025年5月5日

 横浜市中区の横浜市開港記念会館で4月19・20日に開催された、日本マンション学会横浜大会。19日のメインシンポジウム「マンション法の改正を踏まえた未来―シン・社会的資産としてのマンション―」は、佐藤元弁護士、杉田雅嗣・国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)、梶山祐実・横浜市建築局住宅部住宅地再生担当部長の3人が基調報告。パネルディスカッションでは、マンションの今後の在り方について弁護士・学識経験者・管理組合団体の代表計5人が登壇した。

 報告①

 佐藤元弁護士…マンション法制の改正について

 合意形成を円滑に進めるための決議要件緩和や共用部分に係る損害賠償請求権の整備など、まずは区分所有法改正を語った。

 特に特別決議について「これまで全所有者の4分の3が必要だったが、多くの議題で出席者多数決や出席者の4分の3決議で決められるようになった」と評価。さらに、もう一つの大きな改正として所有者不明の住戸を決議の母数から外せる「除外決定」の導入を挙げた。

 共用部分に係る損害賠償請求権については「管理者が旧所有者と現所有者の双方を代理できるようになったのは大きな変化」と評価。

 一方で「個別請求を希望する所有者がいれば代理できず、旧区分所有者が損害賠償金の払い戻しを管理者に請求できる点も課題」とし、一つの案として管理規約での制約に言及した。

 建物の取り壊しに関し提案されることが多い「取り壊し積立金」についても言及。

 取り壊しの実施主体が改正マンション建替え円滑化法(マンション再生法)上は管理組合ではなく、除却組合になる点を指摘し「現行制度では(除却組合に)積立金の引き継ぎができず、反対者に返金せざるを得ない」と問題点を指摘した。

 その上で「取り壊しを実施するみなし合意者の団体や除却組合に将来的に積立金を引き渡すために管理組合は積み立てており、反対者には払い戻さなくていいという法律構成で考えるべきではないか」と述べた。

 報告②

 杉田雅嗣・国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)…国土交通省のマンション政策について

 マンション管理適正化法改正について説明した。

 築40年以上のマンションが全国で137万戸に達し、5割超が高齢者世帯である現状を踏まえ、「建物をいかにしっかり管理していくか、そして集会の決議を含めた管理をどうやっていくかという課題が深刻化している」と述べた。

 法改正は▽管理の円滑化▽再生の円滑化▽地方公共団体の支援体制強化―を柱に進めていると述べた。

 管理面では、「新築の段階から管理計画認定が取れるようにする制度改正を図っていきたい」とした。新築時に分譲事業者が管理計画案を作成し、管理組合に引き継ぐ。

 管理会社が管理者となる方式での利益相反防止策として、取引内容の事前説明義務化にも言及した。

 再生については、建て替え以外に敷地売却や一棟リノベーションなど選択肢を広げる。「決議がなされた後で、その後の手続きを円滑に進められるように整備することが課題」とした。

 自治体には従来の助言・指導・勧告に加え、報告徴収や専門家のあっせん、勧告に応じなかったマンションは公表できる権限も持たせる。

 自治体を支援していく方策として、民間支援団体との連携を促進する支援法人登録制度も導入する。

 報告③

 梶山祐実・横浜市建築局住宅部住宅地再生担当部長…横浜市のマンション管理・再生の施策

 横浜市は、今後10年間で毎年300棟以上の分譲マンションが築40年を超える見込みですでに65歳以上の世帯主が約4割を占めるなど高齢化も進む。

 分譲マンションの建て替えは現在累計で7件、実績としては0・5%ほどにとどまる。建て替えが行われたものも総会決議まで10年以上を要している。

 梶山部長は、2022年に策定したマンション管理適正化推進計画に基づき、管理計画認定制度の普及に力を入れてきたと説明。今年4月時点で212件が認定を受けるなど一定の成果を上げているが「手間が掛かる、メリットが感じられない」との理由で、取得に至っていない管理組合も多いため、支援体制の強化が求められていると述べた。

 また、1983年以前に建築された1453件を対象に実施した調査では、回答のあった約3割に当たる367件が▽管理組合がない▽総会が開催されていない―など市が設けた7項目のうち一つ以上に該当する「要支援」と判定された。

 具体的には「長期修繕計画未作成、見直しがされていない」が一番多く、特徴として小規模、自主管理物件の割合が高かった。

 市は一般社団法人マンション管理業協会と連携して適正評価データを共有しながら、専門家派遣など個別支援を展開する。

 今後は、一棟リノベーションのような再生手法の多様化も視野に入れ、より持続可能なマンション管理を実現していく、とした。 基調報告を行った3氏。上から佐藤弁護士、国交省の杉田住宅局参事官、横浜市の梶山住宅地再生担当部長

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