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一方、高経年のマンションはすでに設定水準が高い傾向にあり増額を許容できる余地が小さいと考えられる。 否決事例では「工事金額や修繕周期をさらに見直すべき」「管理会社の提案は信用できない」「別のプランも提示してほしい」「値上げの根拠が分からない」「議論が充分に尽されていない」など管理会社への不信や明確な根拠を求める意見が挙げられた。
否決後に、増加幅を縮小して再可決した事例が30・5%あったほか、15・3%は同額で再可決、増加幅を拡大して再可決が16・9%あった。過去に一度増額を可決しても2回目の増額が否決されたケースも4件見られた。
大和ライフネクスト受託マンションの長期修繕計画における積み立て方式は均等積み立て方式が81・6%。段階増額積み立て方式は18・4%にとどまる。計画の最終年度が黒字は20・7%。段階増額積み立て方式に限ると黒字は41・7%。
同社の受託管理物件で、段階増額積み立て方式で最終年度の収支が黒字のみの339件(パターンA)と収支を条件としない713件(パターンB)を比較分析した。
AとBでは規模に限らず最小年間積立金総額はほぼ同水準だが、最大年間積立金総額はAが高く、平均年間積立金総額も同様。この点は、黒字を達成する計画では、計画終期に向けての単価の増加ペースが速く、計画期間中の平均的な積み立て水準も高くなる状況がうかがえるとした。
パターンA・Bともに1回当たりの引き上げ倍率の平均は1・3倍程度。大幅な増額が必要な場合でも、総会の決議を得るため一度に大きな増額は避け、期間中の増額回数を増やすことで対応する資金計画が少なくないと推察している(表③に増額の設定状況、④⑤に増額倍率)。
区分所有者のライフプランと修繕費負担のギャップも課題として示唆された。全年齢平均給与額と分譲時長期修繕計画における修繕積立金推移を比較した分析から、おおむね築15年で所有者年齢が50代半ばを超えると収入が減少傾向となる一方、積立金は上昇傾向となり、計画通りの引き上げが困難となる可能性を指摘した。