区分所有法・適正化法等改正法案 参考人質疑 5 9・衆院国土交通委員会 共用部分「損害賠償請求権」に質疑集中 沖野参考人 多様な場面考え規律設ける必要 神崎参

  • 4面
  • 2025年5月15日
神崎参考人
神崎参考人
沖野参考人
沖野参考人
齊藤参考人
齊藤参考人
福島氏
福島氏
たがや氏
たがや氏
長友氏
長友氏
中野参考人
中野参考人
堀川氏
堀川氏
鳩山氏
鳩山氏
赤羽氏
赤羽氏

 神崎参考人 9日の衆院国土交通委員会。参考人が招致され質疑が行われた

 区分所有法・マンション管理適正化法などの改正法案について衆院国土交通委員会は5月9日、参考人質疑を行った。法制審議会区分所有法制部会で委員を務めた齊藤広子・横浜市立大学教授、沖野眞已・東京大学大学院教授、幹事を務めた中野明安弁護士に加え、神崎哲・欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長の4人が出席し法改正の経緯や問題点などについて説明した。質問者は三反園訓(自民)、長友よしひろ(立憲)、奥下剛光(維新)、鳩山紀一郎(国民民主)、赤羽一嘉(公明)、たがや亮(れいわ)、堀川あきこ(共産)、福島伸享(有志の会)の各氏。この日の質疑は「共用部分に係る損害賠償請求権の行使」に集中し質問した8人中7人が言及した。同問題の主なやりとりを示す。

 共用部分等に係る損害賠償請求権について…共用部分等の欠陥等で生じた損害賠償請求権は、欠陥発生時の区分所有者に帰属する。以前は訴訟に際し各区分所有者が個別に、または当該区分所有者全員で提訴する必要があったため2002年、管理者に代理権を与え損害賠償金を一括請求できるよう法改正が行われた。

 ただ損害賠償請求権を持つ区分所有者が債権譲渡をせず住戸を売却した場合でも管理者が「区分所有者」を代理して損害賠償請求できるか、などといった論点は深堀りされず、課題として残存した。

 法改正から14年たった16年7月、欠陥発生時の区分所有者2人の債権譲渡が行われていないことを理由に管理者(管理組合)の請求自体を却下する裁判例が現れ問題が顕在化した。

 今回の法改正では、売却などで区分所有関係から離脱した元の区分所有者の権利も代理して管理者が損害賠償を請求できる仕組みを整えたが、元の区分所有者(旧区分所有者)が「別段の意思表示」をした場合、管理者は当該請求権を代理することはできない旨も併せて規定された。

 このため日弁連・欠陥住宅被害全国連絡協議会らは区分所有権が譲渡された場合、当該請求権も新区分所有者に移転する「当然承継説」の採用を強く求めている。

 こうした主張に対し、政府は「マンション標準管理規約の改正」で対処する方針を示している。国会答弁や配布資料では、標準管理規約に、共用部分について生じた損害賠償金の使途をあらかじめ定めるなどし「元区分所有者が有する賠償金を確実に修繕費用に充当することが可能」だとしている。

 長友氏

 政府は、区分所有権の譲渡に伴い共用部分について生じた損害賠償権については「譲受人に当然承継される制度は財産権の保障の観点から正当化が困難である上個別の事案によっては不当な結論を招く恐れがある」と述べているところである。※4月24日衆院本会議・鈴木馨祐法相答弁。前号参照

 そこで四人の参考人の皆さまから、この政府の見解についてどうお考えになられるか伺いたい。

 齊藤参考人

 大変重要な課題だと思っております。法制審議会の委員として出たときに管理組合が一括してこういうものを請求できるように、というふうに初め考えたところだが、法制審議会の中で、私としては、丁寧な議論を繰り返してきた中で、財産権の問題からこういったことは難しいとおっしゃられました。

 しかし国民の皆さん、区分所有者、管理組合のことを考えたら難しいというだけでは置いてられないので、それでは規約で何とかできないですか、予防のために売買契約で何とかできないですか、ということで、規約でしっかり対処していきましょうと議論を進めてきたと理解しているところでございます。

 沖野参考人

 財産権の保障の観点から問題があるという点について、この点はまさにその通りだろうと思っている。

 (損害賠償債権の)譲渡がされる場合というのは、さまざまな場面がある。典型的には、まだ欠陥が分からない状態で、ちゃんとしたものだとして譲渡をしたところ実はその後分かった、じゃあ損害賠償請求債権どうなるのかという話のときには非常に分かりやすいと思うが、そういう場合ばかりではない。

 欠陥が明らかになって修理をするのか損害賠償なのか、という話になっているところで譲渡をした、ということもありますし、放っておくと危ないのでとにかく補修してしまおう、というので補修した後譲渡するということもある。その時に損害賠償債権が無くなるわけではないので損害賠償請求はできる。

 そういう、さまざまな場面がある中で譲渡契約の当事者の合意に委ねることもなく強制的に移転させるということが本当にいいのかという問題がありますし、さらには欠陥が分かった段階で売らざるを得ないということであると損害賠償債権自体を奪われるだけではなくて適正に区分所有権を譲渡できるか、という、その部分における財産権の問題というのも指摘されている。

 ですから多様な場面を考えて規律を設ける必要があるということ。

 しかし放っておいていいのかというのは一方で問題で、財産権の侵害になってもそれを上回る政策判断があり得ないのかということだが、政府案の下でも規約で書いておくということは考えられるわけで「別段の意思表示」については「別段の意思表示はもうしない」という形で規約を定めれば、その後抜ける人もすでに拘束されている状態ですので(規約の効力が)及んでいくと考えられる。

 損害賠償債権そのものをどうするかという問題があるが、解釈の余地があるところではあるが、共有物の管理に関して管理費、修繕積立金なり修繕費をどうするかという問題があって、その原資にこれを充てるというような規約の定めをすることで「管理の問題」として規定することもできるんじゃないか。

 直ちにそれをやればいいというのではなかなか進まないので、モデルというか、標準管理規約に書いていただければ「こういう形にすればできるんだ」ということが明らかになって進むのではないかと考えられる。

 個人的には区分所有権の譲渡契約のモデルについても考えていった方がいいんじゃないかと思っている。

 中野参考人

 (法制審議会の)議論の状況の中で(当然承継を採用した場合の)不都合が生じることについての具体的な事例は出てこなかった。

 神崎参考人

 「正当化が困難」で不都合が生じるということだが場面が不明であると言わざるを得ない。

 譲渡人の財産権の保護を言っていると考えられるが、具体的にどのような場面で財産権が侵害されるのか、どのような不当な結論が招かれるのかが全く分からない。

 私の知る限り、転売した旧区分所有者が共用部分の欠陥について補修費用相当の損害賠償請求権を個別行使して賠償金を取得したなどという事案は聞いたことがない。

 「当然承継」の考え方は現行区分所有法の考え方から当然に導かれるものと考えており特別な考え方ではないからこそ、これまで旧区分所有者が特別な権利行使をしなかったわけだが、今般このような法改正をすると通知によってそれを知らせ別段の意思表示をすることによって個別行使を許してしまうことになり取り返しのつかないことになる。

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