一般社団法人建物調査診断受託センター(TJC、阿部操代表理事)は6月7日、東京・新橋のAP新橋で第5回の「マンション改修見える化セミナー」を開いた。省エネ改修・長寿命化・専有部分給水設備改修をテーマにした講演があり、約30人が参加した。
「長期修繕計画から見た長寿命化の必要性」のタイトルで講演したTJC理事の立岡陽・イントロン代表は、防水・外壁塗装・シーリング・タイルなど各部位の改修仕様に応じた工事保証年数を基に「期待耐用年数」を例示。施工品質の確保を前提に「期待耐用年数を期待して修繕周期を組んでいきたい」と述べた。
「今の感覚では大規模修繕の工事周期は15年」とした上で、第1回の工事を築15年で実施した後、有償のメンテナンスを実施するなどして工事を5年延伸できれば3回目の大規模修繕を築55年に実施でき15年周期と比べ工事を10年後ろ倒しできる、と指摘。資金も蓄えられる、と述べた。
期待耐用年数を実現する上で不可欠な品質の確保には「職人の技量が必要。どうやって技量を担保していくかが重要」と言及。ウレタン防水施工時、防水塗料が入っている一斗缶を使い切る面積を示し職人の膜厚確保の意識、感覚の熟練度を上げる、など現場監理での工夫点も紹介した。
長期修繕計画を「最適化」した事例も挙げ「『時期が来たからやりましょう』ではなく、建物としっかり対(たい)峙(じ)してやっていくことが重要」だと述べた。
TJC会員の上田光輝・アトリエウエダ1級建築士事務所代表は専有部分給湯管からの漏水事例を報告。専有部分配管のため管理組合として対応しないとの決定を受け、区分所有者が漏水対応を行ったケースと、漏水を機に管理組合の主導で全戸の給湯管を更新したケースを紹介した。
組合主導で工事を行う場合、管理規約の改正や資金計画に加え▽標準工事の仕様決定▽各戸で改修する際の技術的指針の検討▽専有部設備改修済み住戸への対応▽住戸環境等により施工ができず「残ってしまう」工事への対応―などを検討項目例として示した。
「残ってしまう」工事への対応として、特定の住戸でユニットバスを交換しないと配管が更新できないケースで、理由を示しユニットバス交換時に配管も更新してもらう取り決めをした、更新しやすいようあらかじめ点検口の設置を提案する検討を行った、といった例を示した。
配管更新等にどう取り組むかは①専有部分配管は区分所有者が実施②管理組合として一斉工事を計画するが費用は各戸負担③共用部分と一体の設備として修繕積立金から拠出して実施―から方針を決めると良い、とアドバイスを送った。
①は居住しながらの工事は難しく売買時での実施が多いが未施工の場合もある、②は費用負担が大きく実施が困難なことが想定される、③は修繕積立金の改定が必要になることが多い、と注意点も挙げた。 セミナーの様子。長寿命化をテーマにした講演では、15年前に実施した防水工事の工事品質が高く、修繕周期の延伸が可能だと判断。間に補修を実施することで次回工事を19年後に設定した事例も紹介した
