契約解除時の配慮 手厚く 管理者事務委託契約書案を公表 10月10日まで意見募集 国交省 標準管理規約「書き換え案」では 「投票制度」「評議会」条文例も

  国土交通省は9月26日、管理業者管理者方式における契約書のひな型「マンション標準管理者事務委託契約書」案を公表し意見公募手続き(パブリックコメント)を始めた。10月10日まで。11月1日の公表を予定している。9月11日に開かれた、契約書案を検討する有識者会議では8月の会議で示された契約書原案に対する委員の意見を踏まえた「修正版」が提示されたが、この日の議論を受け、パブコメ案はさらに変更が加えられている。原案で「管理者事務に含まれない業務」とされた「長期修繕計画の作成・改正案の作成」は削除。マンション標準管理規約では、区分所有者の意思を反映するための措置として「投票制度」、「管理評議会」を設ける場合の条文例が新たに示された。

  管理業者管理者方式を採用した場合の規約条文例をマンション標準管理規約に盛り込んだ「書き換え表」、マンション標準管理委託契約書の改正案も公表されている。

  8月に提示された、事務委託契約書の原案からの主な変更点を表に示した。

  管理者業務に「含まれない」と規定した「長期修繕計画案の作成・改正案の作成」は「管理者である管理業者が外してしまうと誰がやるのかという問題になり」などとする意見を踏まえ業務に含めることとした。

  その上で長計案・改正案に係る業務を委託する場合、管理者事務委託契約・管理委託契約とは別契約とし、費用は管理組合と協議して定める必要がある旨コメントに追記した。

  「管理規約・使用細則等の制定、変更・廃止案の策定」業務についても同様の措置が取られた。

  「監事または総会決議により選任された者」と規定された、保管口座の印鑑所持に関する規定は維持された。標準管理規約案では保管者を「監事」と規定していたが、契約上の規定が維持され規約案の規定は削除されている。

  管理者側から辞任を求め、管理組合の不利な時期に契約を解除した場合は、申し入れ期間を「少なくとも6カ月前」とするなど実情を踏まえて設定することが望ましいとした。

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  標準管理委託契約書は8月の原案から大きな変更は加えられていない。

  標準管理規約は、一定金額以下の契約は管理者の判断で実施できる、監事に対する必要経費と報酬の支払いをできる-などの規定が加わった。保険金や損害賠償金の請求については管理者の一元的な権利行使の例外としてただし書き「総会で別段の決議がされたとき」を付加している。

  管理者の欠格条項に暴力団員を追加、また監事の誠実義務・利益相反取引防止、印鑑所持者の善管注意義務に関する規定も設けた。

  監事を「組合員・組合員以外の者」から選出する「2人体制」は維持した。

  総会以外で区分所有者の意思を反映するため「投票制度」「管理評議会」を設ける場合の条文例も示した。

  投票制度は区分所有者の一定数以上から要求があった場合、投票で賛否を問わなければならない。管理評議会は、総会で管理者が提出する議案や職務の執行に意見を述べる。管理者が退く場合、管理者の選任、管理規約の変更に関する議案について監事に意見を述べる。

 原案からの主な変更点

 ・管理者の業務に「含まれない」と規定した「長期修繕計画の作成・改正案の作成」を削除。「管理規約および使用細則等の制定、変更または廃止に関する案の作成」も含め、管理者に委託する場合は別途契約を締結する。業務に必要な費用は双方が協議して定める

 (3条、同コメント・業務内容)

 ・管理者事務担当者と管理事務担当者は「別の者」が務める体制を整備する→「別の部門に所属する者」と厳格化

 (4条・乙の業務体制)

 ・「管理者事務担当者にはマンション管理に係る専門知識を持った者を就任させる」規定に関し「管理業務主任者・マンション管理士など」が担当することが望ましいと言及

 (6条関係コメント・資格要件)

 ・組合員から請求があった時は事務の処理状況報告を行わなければならない、組合員はこの場合事務処理状況に係る関係書類の提示を求めることができる旨規定していたが、「組合員」を「甲(管理組合)」に変更。ただコメントで組合員から求めがあった場合は事務処理状況を記載した書面を交付するなどの情報開示を行うことが望ましい、とした

 (10条、同コメント・管理者事務の報告)

 ・緊急時の業務で利益相反取引を行うことができる前提となる「あらかじめ総会の承認を受けている場合」の解釈を提示

 (12条関係コメント・緊急時の業務)

 ・「管理者事務担当者を選任・変更したとき」を通知義務に追加

 (14条・通知義務)

 ・「秘密保持義務」を17条として追加

 (17条)

 ・契約途中で管理者側から辞任を申し入れる場合、少なくても3カ月前までに申し入れるべきだと言及。管理組合の不利な時期に契約を解除した場合、やむを得ない事由が認められる場合を除き管理組合に損害賠償義務を負うこと、管理組合が新たな管理体制を構築する必要があること、事務の引き継ぎが必要なことなどを考慮すると「少なくても3カ月よりも前に解除の申し入れを行うべきと思われる」とし、「3カ月」を「6カ月前」とするなどマンション管理の実情を踏まえ設定することが望ましい、とした。また解約申し入れに際しては全組合員に通知するほか解約時期・解約理由を所定の掲示場所に掲示することとした。監事や総会決議に基づく組合員の求めがあるときは後任候補選定や後任選任までの業務契約を結ぶなど契約終了後の円滑な移行に必要な協力を行う、とした

 (20条、同コメント・契約の途中における解除等)

 ・契約終了が決まった際、監事または総会決議に基づく組合員の求めがあるときに行う支援として「後任が選任されるまでの間の暫定契約の締結」を追加

 (23条、同コメント・契約の終了等)

 ・「管理者事務に関連して紹介手数料・仲介料・その他謝礼、その他の対価の支払い・便宜の供与その他の利益は総会の承認を経ずに、管理組合以外の者から収受・供与してはならない」と規定した条文から「総会決議を経ずに」を削除。決議の有無に関わらず収受・供与を禁じた

 (25条、同コメント・誠実義務等)

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