参考条文
■共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等
○第1項の決議により共用部分の変更をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の変更に伴い必要となる専有部分の保存行為または専有部分の性質を変えない範囲内においてその利用もしくは改良を目的とする行為(次項および次条第4項において「専有部分の保存行為等」という)は、集会において区分所有者の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)の者であって議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあっては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3(これを下回る割合(2分の1を超える割合に限る)を規約で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数による決議で決することができる
区分所有法第17条3項
○前項の決議をする場合において、専有部分の保存行為等の態様または費用の分担に関する事項を定めるときは、決議の対象となる専有部分の区分所有者の利用状況、当該専有部分の保存行為等について区分所有者が支払った対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければならない
同法第17条4項
○第1項本文の決議により共用部分の管理をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等は、集会の決議で決することができる
同法第18条4項
○前条第4項の規定は、前項の決議について準用する
同法第18条5項
○専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の保存行為等(区分所有法第17条第3項の「専有部分の保存行為等」をいう。以下同じ)を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、総会の決議を経て、管理組合がこれを行うことができる
標準管理規約第21条2項
○第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。配管の清掃等に要する費用については第27条第3号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取り替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担するものである。なお、共用部分の配管の取り替えと専有部分の配管の取り替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取り替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取り替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である
なお、第2項の規定は、区分所有法第17条第3項および区分所有法第18条第4項にいう規約の特別の定めに該当し、第2項中の「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の保存行為等(区分所有法第17条第3項の「専有部分の保存行為等」をいう。以下同じ。)を共用部分の管理と一体として行う」ことは、第47条第3項第3号および同条第4項第2号中の「敷地および共用部分等の変更に伴って必要となる専有部分の保存行為等」に含まれる
同条関係コメント
※傍線は改正部分前ページのつづき
改正法における具体的手続きに言及した。
法が求める「特別の定め」は改正後の21条2項が該当する。新設された同条関係のコメントでも言及がある(表に関連条文)。
佐藤弁護士は「(規約条文が)すでにある所は一応規定はあることになる」が今回の法改正を踏まえ変更した箇所を提示し「標準規約の改正に対応した改正をぜひともやっていただきたい」とアドバイスを送った。
工事費を修繕積立金から支出する点では、先行して専有部分の配管更新工事を行った区分所有者がいた場合、当該区分所有者が負担した費用等を考慮して総会決議の際「衡平性の確保措置」を取る必要がある(同法17条4項)。
佐藤弁護士は、先行工事を行った区分所有者がいるかどうかなど「事前のアンケート、調査が重要なポイントになる」と話した。
久保委員は「衡平性の確保」に向けた措置に言及。
①先行実施した全住戸について今工事をしたらいくらになるか見積もりを取る。現在の工事費を補(ほ)填(てん)額とする②先行実施した住戸のタイプ別に見積もりを取る③見積もりは取らず管理組合が支払える範囲で全戸同額の補填額を決める―と具体例を三つ示した。
①は、いつ工事を実施したかで劣化具合が異なるため「それをどう測るのか、例えば減価償却の考え方とか、そういったものまで取り込んでくると非常に複雑になってくる」(久保委員)。
そのため「多くは現在価値、今工事をやったらいくらですかということを一つずつ見積もりを取って金額を算出する方式」だと説明した。金額が高く出る、見積もり取得までに時間が掛かるデメリットがあると述べた。
③は、いわば「お見舞金のような形」だと言及した。
久保委員は「これをやれば絶対皆さんが納得していただけるという方法は残念ながらない」とし①~③、またそれ以外の方法で対応しても構わないが「十分に議論していただきたい」と話した。
「国内管理人」(同法6条の2)。いわゆる「できる」規定として新設。標準規約では、規約で選任を義務化する場合の条文例などを示している(31条の3関係コメント)。
藤木理事は、区分所有者が海外に居住している場合「総会等の資料を送付する手間、費用。郵便物が届いたかどうかということも心配になる」と実情を報告。管理費等の滞納があると「相手が外国にいるために困難を極める」と話した。
髙辻副会長は、法人区分所有者について、法人自体は国内で登記されているが代表者の居住地は「国外というケースでも選任させることが可能なのか疑問が残っている」と意見を述べた。
佐藤弁護士は管理費等の滞納では、国内管理人は「管理費等を支払う権限はあるが義務はない」と言及。管理人に対する督促はできるが裁判は国外にいる区分所有者に起こさなければならない、と解説した。
髙辻副会長が指摘した問題には「国内管理人の適用はない」と説明した上で、こうしたケースも規約で「国内管理人的なもの」とし届け出るよう規定を設ける対応が考えられるが「規約を定められるのかということも含めて、今後さらに詰めた検討をしなければならない」と話した。
久保委員は「最も気を付けていただかないといけない」点として、選任を義務化する場合、区分所有者に「(管理人を誰にするか)『あてはありますか?』とお聞きして、それから決めることが大事」と事前の調査・情報収集を提示。
「あてのないまま規約だけをボンと変えると、全員が規約違反ということになりかねない」。管理人を選任し
た場合も「総会決議よりも前に管理組合から連絡を取ってどんな方なのか確認しておくとか、そういった丁寧な対応が必要になってくると思う」と話した。