「少しでも増やしたい」思い切実 不動産ファンドに出資の管理組合 「換金性」の高さを重視 ④   いまどき  金融商品 運用期間の縛りなし 「安心材料、リスクヘ

 「菱和パレス秋葉原駅前」管理者の幅祐斗さん。理事会はなく監事が2人いる。6年前にマンションを購入し2年前、管理者に立候補したという

  東京・秋葉原の「菱和パレス秋葉原駅前」(築25年、56戸)管理組合は10月9日、臨時総会を開き、修繕積立金の運用について承認を得た。従来利用してきた定期預金を解約し、一部を管理組合向け不動産ファンド「クレアスファンド みらいの樹」に出資する。管理者の幅祐斗さんに資金運用について聞いた。

  「菱和パレス―」は投資型のワンルームタイプ。管理者方式を採用している。

  幅さんは「修繕積立金を少しでも増やしたい。2回目の大規模修繕工事を控えていて積立金が足りないんじゃないか、何かできないかと考えたのがきっかけです」と説明する。

  独力で金融商品を調べ定期預金、住宅金融支援機構のマンションすまい・る債、円建て債券、管理組合でも購入できる新窓販国債、投資・金銭信託をピックアップ。最終的に「クレアス―」を運用候補とした。

  「クレアス―」はクレアスライフ(本社東京)が開発(9月15日付・第1313号に商品の概要)。1口10万円で最小5口・50万円から出資ができる。運用期間は設けていない。

  分配金の年率は税引き前で1・0%。解約した定期預金の利息は0・25%だったという。「菱和パレス―」では3000万円を出資する。

  ただ元本保証がないため「怖い」「長期の運用実績では不安もあり見送りたい」など総会時、運用に反対する意見もあった。

  運用リスクに対し、幅さんは投資先の都心分譲マンションの評価に収益還元法が採用されている点に着目。「(評価は)ほぼ家賃と考えてよく」、元本割れのリスクは低いと結論付けた。現在の状況から「都心で家賃が下がることは考えにくい」という判断だ。

  運用物件のリストも確認し管理費・修繕積立金に問題がないかもチェックしたという。

  幅さんは「クレアス―」について運用期間の縛りがない、つまり「いつでも解約できるところ」を評価した、と話す。出資後、安全性に不安が生じた場合「止めたいときに止められる」点は「安心材料、リスクヘッジになる」(同)。突発的な修繕で資金が必要になった際、すぐに換金できるメリットもある。

  長期修繕計画では15年ごとに大規模修繕を計上しており次回工事は5年後。「5年以上は運用したい」(同)と考えている。

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  工事費の高騰による資金不足で運用を検討する管理組合が増えている。ただ「管理組合」という特性上、商品選びでは、やはり「元本保証」を優先するケースが多い。

  そこで注目されるのが個人向け国債だ。財務省は国債の保有促進に向け、これまで個人に限定していた販売対象を管理組合を含む法人等に拡大することを決定。2026年12月募集分から管理組合も個人向け国債を購入できるようになる。

  個人向け国債は新窓販と比べ利率水準では劣るが市場取引がないため安全性は高い。発行から1年経過後は中途換金が可能になる。中途換金した場合は一定額が「調整額」として控除されるが、事実上元本は保証される。

  購入時、新たに国債専用の口座を開設しなければならないが検討の余地はあるだろう。

  長く超低金利時代が続いたが金利上昇局面を迎え管理組合にもさまざまな金融商品の比較検討が求められる時期に入りつつある。

 おわり

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